この島の一番高い山『イマキラ岳』に登って見ることにする、標高が270メートルある、この小さい島にこの高さなので急な登りが続く、頂上までの距離は約1500メートルぐらいだろうか、途中、一軒目の民宿の前を通るが静かである、定期船も毎日来ないので港にも人が居ないのだ、山頂に続く道沿いに7〜8軒の民家が点在する、家の傍の空いた土地を畑にして野菜を作っている、道路脇にゲットウの花が咲いている、生姜科の植物でこの時期に花が咲く、花の重みで穂先がみんな下に垂れ下がっていて面白い。
 急斜面の道を登ること30分夏の様な気温に汗だくになりながら、ついに『イマキラ岳』の頂上に出た、頂上から見下ろす海の色が水深によって濃紺の部分と淡い水色のグラデーションが海から吹き上がってくる風とともに一層涼感を呼び一気に汗が引いてゆく
 北東方向に港があり北西にもう一つの山『女神山』がある、見下ろせるので此処より低いのであろう、島の中央に池がある、島全部を探検しても一日と掛らないであろう大きさだ。
 どう考えても海賊が財宝を隠すような場所ではない様に思えるのだ、そこで次のような推理をしてみた。島の名前が実は何かを隠すための偽装工作と考えられないだろうか、皆の注意を引くために、この島に宝島と名前を付ける、もう一つ隣の小さい島を小宝島と付ける、いかにも宝が有りそうだ、皆の注意は当然この2つの島に集中するようにして、宝島、小宝島、悪石島、諏訪之瀬島、中之島のうち宝島から一番遠く離れた、一番大きい島、中之島に隠したのではないか。宝島より大きい島には隠せる場所が幾らでもある、宝島ではあまりにも小さくて明るすぎるのだ、宝島を偽装工作に利用したと考えた方が納得がいく。

 それと、キャプテン・キッド伝説も眉唾ものだ、海賊が暗躍していた場所は北欧からカリブ海に至る大西洋だ、太平洋に海賊が出没したなんて話は聞いたことが無い、奄美の海に登場するには余りにも唐突すぎる、海賊と言えばカリブ海が定番だ、それでは誰が宝を隠したのか?
 これは、薩摩藩、つまり島津家と考えるべきだろう、1609年当時から日本で一番多くの船を所有していた薩摩藩は奄美諸島から沖縄までを統治し勢力を拡大して島民から黒糖を搾取し西日本一円で販売していた最大手であった。当然当時の大名徳川幕府からは莫大な所得を隠す必要があった、薩摩半島に隠しても何時かはばれてしまう、そこで船でしか行けない場所に目を着けたのが南西諸島の島々だ。
 1609年以後島津が奄美、沖縄を統治していた、そこで伝説の海賊キャプテン・キッドが選ばれた、どうせ海賊なんて悪人でいい加減な人物だ、彼にしておけば歴史上何の問題も起こらないと考えたのだ。
こうして所得隠しは成功した、と言うシナリオを山を降りながら考えた、この方が筋が通って面白いと思いませんか!(此処だけの話にしといて下さい)、でもこれを暴露してしまうと夢が壊れてしまいそうな気がする、南海の孤島のロマンとしていつまでも残してほしい・・・。