<世界最大客船がもたらす甚大な汚染問題>

参照:The GuardianのHP

世界最大客船ハーモニーオブシーズが、その最初の航海に日曜日の午後にサウサンプトン港から出航する時、その16階建の
高層浮遊都市は予備エンジンのスイッチを切り、3つの巨大なディーゼルエンジンを燃やして大海原へ出発するでしょう。
しかし、6780人の乗客と2100人の乗組員が乗った世界最大客船がイギリスを出航するのを見て、サウサンプトン港の住民は
喜んでいるでしょう。住民はクルーズ業界は観光産業の中でも特に急速に成長している分野となり、船がどんどん巨大化するにつれて
大気汚染は年々悪化していると訴えています。
ロイヤルカリビアンが所有する巨大客船ハーモニーは、世界一汚いディーゼルオイルを1時間に520リットル、1日に25万リットル
燃焼するバルチラエンジンを備えています。
アメリカとヨーロッパの一部の海岸近くの港では、巨大客船ハーモニーは低硫黄燃料を燃やすか、削減技術を使用しなければ
なりません。しかし、環境グループサウサンプトンクリーンエアのメンバーであり、港から約360メートルの所に住んでいる
コリン・マックィーンさんはクルーズ船と貨物船からの煙が間違いなくひどい大気汚染をサウサンプトンにもたらしていると主張しています。

「私たちは煙を見ることもできるし、匂いも感じるし、煙の味までわかります。
これらの船は、ブロックのように横たわっています。港内に5つ以上の船が係留している時があり、風が吹くと汚染された空気は直接
街まで届き、私たちが気づくくらいです。ここには大気汚染を監視するシステムがありません。私たちはクルーズ会社に何度も大気汚染を
減らすために陸電を使用するように要求してきましたが、クルーズ会社は拒否しました。

巨大客船ハーモニーオブシーズを所有しているロイヤルカリビアン社は、最新かつ最も効率的な汚染制御システムを用いたことと、
船はすべての法的要件を満たしていると述べました。そして、業界団体クルーズライン国際交流協会(CLIA)は、企業が「大気への排出を
削減するための新しい技術を開発するために過去10年間で大幅に投資していた」と付け加えました。

しかし、ドイツとブリュッセルの海洋汚染の分析家は、このような巨大船は、おそらく1日に150トン以上の燃料を燃やし、その燃料は
数百万台以上の車から排出されるよりも多くの硫黄や二酸化窒素を排出します。
これらの数値は中規模の街を1日で通過するすべての車から排出される量よりも多く、ロンドンを走るすべてのバスが排出する
粒子状物質(大気汚染を引き起こす物質)よりも多いのです。

ドイツの汚染分析家であるアクセル・フリードリヒ氏によると、たった一隻の大型クルーズ船は、1日に5トン以上の窒素酸化物
(喉、気管、肺などの呼吸器に悪影響を与える)と450キロの微小粒子状物質(PM2.5)を放出するそうです。
ブリュッセルにある交通と環境グループの海洋専門家であるビル・ヘミングス氏はこう述べています「これらの船は街全体で使うのと
同じくらいの燃料を燃やします。彼らはコンテナ船よりも多くの燃料を使用し、それらが低硫黄燃料を燃やす場合であっても、
車のディーゼル燃料よりも100倍悪影響を及ぼします」。
また同グループのホームページ上ではヨーロッパだけで年間5万人の早死はこれらの船からの大気汚染が原因だと述べています。

ドイツの環境グループNABUのダニエル・リーガー氏は「クルーズ会社は、明るく清潔で環境にやさしい観光分野であるという
イメージを作り上げています。しかし、真相は正反対です。これらのクルーズ船は陸上に危険廃棄物として廃棄されなければならない
重油燃料を使用しているため、たった1隻のクルーズ船が排出する大気汚染物質の量は500万台の車が走行する時に排出する量と
同じです」と述べています。
環境グループNABUはドイツの大きい港で汚染を測定し、高濃度な汚染物質を発見しました。
「重油は、自動車に使用されているディーゼルよりも3500倍以上の硫黄を含みます。船は、乗用車と大型トラックに標準装備されて
いる微粒子フィルタのような排気削減技術を持っていません。」と リーガー氏は述べています。
イギリス第2位のコンテナ港を持ち、ヨーロッパで最も忙しいクルーズターミナルであるサウサンプトンは、世界保健機関によって都市には
少しの製造業しかないのにもかかわらず空気の品質に関するガイドラインに違反するイギリス9都市のうちの1つに挙げられました。
サウサンプトン監視グループWDCFの副会長クリス・ハインズ氏は「港からの汚染は喘息および胸部疾患につながっています」と述べた。

NOx(窒素酸化物):燃料を高温で燃やすことで、燃料中や空気中の窒素と酸素が結びついて発生します。
工場や火力発電所、自動車、家庭など発生源は多様です。
都市部の自動車から排出される窒素酸化物(NOx)による大気汚染が問題となり、現在も排出ガス規制などにより排出量を減らす努力が
続けられています。
人体への影響…のど、気管、肺などの呼吸器に悪影響を与えます。

粒子状物質:固体および液体の粒を指します。工場などの煙から出る煤じんや、鉱物の堆積場などから発生する粉じん、ディーゼル車の
排出ガスに含まれる黒煙などのほか、土ぼこりなど自然現象によるものもあります。高度経済成長期には、洗濯物や室内の汚れなど
生活環境への被害が発生しました。
人体への影響…呼吸器疾患やガンなどと関連があると考えられています。

二酸化硫黄:無色の気体で、独特の刺激臭があります。湿ったものに接触すると、二酸化硫黄は硫酸になり、目や粘膜、皮膚に強い
刺激を伴った影響を与えます。
人体への影響…目、のど、気道に刺激を与えます。 二酸化硫黄にさらされ過ぎると短期的な場合、炎症や痛みを引き起こし、せきが出る、
目が赤くなる、呼吸がしづらい、胸が苦しいなどの症状が表われます。